昭和の時代と僕+

昭和の時代。僕のまわりで起こった些細な出来事を手当たり次第に綴った。

箱菓子と僕

 僕の親は両方とも10人きょうだいだった。だから僕の家にはお盆の時期になると沢山のお客さんが来た。そしてお供え物やお土産を持って来た。僕と姉ちゃんの狙いは仏壇の前にある箱菓子だった。

 お客さんが帰った後、家族にバレない様に箱菓子の中身をいただいた。当時の箱菓子は紐で縛ってあるので上手に外すと元通りにすることができた。中のお菓子の数が不自然にならないようにお菓子を1個か2個いただいた。和菓子系の饅頭が多かったが、中にはモダンな洋菓子もあった。特にロシアケーキがあるとしめしめと思った。ケーキとは名ばかりで固いクッキーだったが、クッキーの中に入っているジャムとクッキーの相性が良く和菓子とはまた違った美味しさがあった。僕と姉ちゃんは2度いただくことができた。

 僕と姉ちゃんはバレていないと思っていたが、母さんにはバレていた。毎年いただいていたので気がついたらしい。お土産のお菓子は僕と姉ちゃんは減らされてしまった。

海浜学校と僕

 僕の学校は夏休みの前に3泊4日の海浜学校があった。小学4年から中学3年が参加し民宿を借りきっての行事だった。海のない町で育つ僕にとっては楽しみの一つだった。水泳学習はもちろん宝探しゲームやスイカ割り、花火、キャンプファイヤーと僕らのために先生と父兄は頑張って企画準備していた。皆なで食べる民宿の食事も楽しみだった。海の町は我が町とかわらず小さいけれども活気があった。夕方の休み時間は近く店を覘きアイスキャンデーを食べながらお土産を買うために散策した。

 3日目の夜はキャンプファイヤーを囲んでのフォークダンスだった。僕はウブでシャイな性格だったので、気になっている女子とのオクラホマミキサーはドキドキした。嬉しかったが身体の密着や手の掴み加減で相手に悟られないように注意しながら踊った。

  

 海浜学校は夏の楽しい思い出だった。そして夏休みになった。

手押し噴霧器と僕

 我が町は田舎だったので、どの家も夏は窓や玄関は常にオープンだった。網戸は無く家の中はハエだらけだった。そこで活躍したのがフマキラーの手押し噴霧器だった。レバーを押してフマキラーの液を噴霧させハエを退治した。ばあちゃんが噴霧した液が間違ってみそ汁の鍋に入ってしまいフマキラー臭いと大騒ぎになったこともあった。
 その他にハエの捕獲用としてはハエ取り紙がありどの家にもぶら下がっていた。でも、頭に何度もくっ付きハエ取り紙をはがすのにひと苦労した。髪の毛にハエのおまけも付いてきた。

 

粉末ジュースと僕

 僕が小さい頃、粉末ジュースの素がどの家庭にもあった。夏の定番だった。オレンジ味はもちろんメロン味、イチゴ味などがあった。僕はメロン味が好きだったが我が家はオレンジ味が主流だった。友達の家に遊びに行くとパイン味が出され初めての味に感動した。
 粉末の素を水に溶かして飲むのだが、まだ冷蔵庫は無かったので氷は無く冷たい井戸水で溶かして飲んだ。暑い外から帰って来て飲むジュースは最高だった。徳用の袋に入っていたが、何杯でも飲めるように粉末の量を減らして飲んだ。それでも美味しかった。

 その後、粉末ジュースの素から希釈タイプの乳酸菌飲料になった。希釈タイプの乳酸菌飲料と言えばカルピスだったが何故か我が家は森永コーラスだった。お中元に貰った物で、瓶を包んでいた包装も水玉模様で似ていた。

 

井戸ポンプと僕

 僕が小さい頃、家には水道が無かった。もちろん周りの家にも水道が無かった。各家ではそれぞれ井戸を掘って手押しポンプで水を汲み上げていた。金気を取るためにポンプの先には布の袋が被せてあったが、手押しポンプで汲み上げた水は冷たく美味しかった。

 僕は学校で水を飲まず我慢して帰って来るとすぐに台所に行った。手押しポンプにはコツがあり何度かフェイントをかけ一気に力を入れて水を汲み上げなければならない。気を抜くと跳ね上がったハンドルが顎に当たり痛い目にあった。花柄のコップで飲む冷たい水は最高だった。

 夏にお客さんが来ると井戸の汲み上げた水でスイカを冷やして出した。お客さんは冷えたスイカを美味しそうに食べていた。
 電動式のポンプで水を汲み上げる家も出てきたが、我が家は井戸水が枯れてしまうこともあったので手押しポンプのままだった。

野菜の箱詰めと僕

 僕の家は稲も作っていたが野菜農家だった。色んな野菜や果物を作っていた。繁忙期になると僕も手伝いに駆り出された。
 トマト・キュウリ・ナス・ジャガイモ・ナガイモ・ユリ根・ダイコン・ニンジン・ネギ・ハクサイ・キャベツ・レタス・ニラ・カリフラワー・シソ・トウキビ・アスパラガスはもちろんサヤエンドウ・キヌサヤなどの豆類やメロン・あじ瓜・スイカ・ブドウ・サクランボ・ナシなどの果物。40~50種類を時期毎に学校から帰ると収穫から選別・箱詰めなど手伝った。
 野菜は家族全員で夜遅くまで選別し箱詰めをし、父さんが朝早く車で市場に出荷した。野菜を詰める箱は市場から仕入れた魚箱に新聞紙を敷き見栄えが良いように詰めていく。僕と姉ちゃんは箱詰めの係だった。キュウリは曲がりを伸ばして綺麗に見せるのがコツだった。姉ちゃんは速く綺麗にキュウリを詰めていた。僕は姉ちゃんに追いつこうと頑張ったがダメだった。

 

 いつも納屋は野菜で一杯だった。たまに通り掛かりの人が野菜を買いに来ていた。

少女漫画と僕

 僕の家の隣に小川を挟んでH君が住んでいた。H君は1つ年上でお姉さんが2人いた。H君の家に行くと漫画本が山ほど積み上げてあった。それも少女フレンドやマーガレットやりぼんなどの少女漫画がほとんどだった。
 僕の漫画本の出合いは少女漫画だった。僕はH君の家に遊びに行くと姉弟と一緒になって夢中になり夕方まで漫画を読み続けた。少女漫画は顔の三分の一が瞳で瞳の奥で星がキラキラ輝いていた。

 少女漫画はわたなべまさこ浦野千賀子・細川知栄子などの女性作家に交じって男性作家が頑張っていた。特に望月あきらの「サインはV!」などのスポーツ根性作品や楳図かずおの「へび女」などのホラー作品が好きだった。

 でも、1年くらいしてH君の一家が遠い処に引っ越して行った。それ以来しばらく少女漫画は見れなかった