昭和の時代と僕+

昭和の時代。僕のまわりで起こった些細な出来事を手当たり次第に綴った。

鶏小屋と僕

 僕の家には小さいながらも鶏小屋があった。鶏は十羽くらいおり毎日新鮮な卵を産んでいた。産卵する場所は決まっておりリンゴ箱の中に毎日5~6個産んでいた。僕はいつも夕方に卵を取りに行くことになっていた。リンゴ箱には鶏が入る穴が開いており手を入れて卵を取ったが、たまに鶏が大事に卵を温めている時は手を入れると突かれることがあった。

 ある時、兄ちゃんが卵を取りに行った。「鶏小屋が何やら殺気立っていることに気がついたが、いつものようにリンゴ箱に手を入れると冷たいヌルっとした感触があり、慌ててリンゴ箱を持ち上げた。鶏ではなく蛇が卵を飲み込んでとぐろを巻いていた。」と家に青い顔をして駆け込んで来た。兄ちゃんは巳年生まれなので干支の蛇が好きそうだがそうではないらしい。

 僕が見に行くと蛇が卵を飲み込んで腹のあたりが膨らんでいた。どこからどこが腹かはわからないがたぶんそうだと思った。そのうち蛇はするすると鶏小屋から逃げて行った。

 母さんにいつも鶏小屋に入る時は静かに入りなさいと強く言われていたが、その事があって毎回リンゴ箱を蹴飛ばし持ち上げて蛇がいないことを確認し卵を取っていた。中にいた鶏はびっくりして飛び回っていた。僕が鶏小屋に入ると鶏はコケッコッコーと騒ぎ出し逃げ回っていた。

 結果的にリンゴ箱の中には卵は1~2個しか産まなくなり、他の場所に産んだ卵を探すのが大変になった。