昭和の時代と僕+

昭和の時代。僕のまわりで起こった些細な出来事を手当たり次第に綴った。

蛇女と僕

 我が町では2~3年に1度夏休みの時期に学校の体育館で映画会をした。我が町には映画館がないので、映画を観に行くにはA市かF市しかなかった。映画会は人が集まる我が町の大きな催し物だった。町の大人達は農作業があるので終わった夜に上映した。僕が小学2~3年生の頃に初めて両親と子ども3人で映画を観に行った。初めての夜の映画会で僕はワクワクしていた。体育館は町の人でいっぱいだった。

 映画のタイトルは「怪談蛇女」。その頃話題となった新しい映画だった。冷酷な大地主一家に虐げられ死に追いやられた小作人一家が、恐ろしい蛇の化身、あるいは亡霊となって復讐する恐怖映画だった。誰がその映画を決めたのかわからないが、子どもには凄まじい恐怖だった。あまりにも恐ろしく泣き出す子どももいた。エッチな場面もあり小学生の僕には刺激があまりにも強すぎた。特に女性の肌が蛇の鱗だったのは今でも脳裏に焼き付いている。僕はワクワクした気分がぶっ飛んでしまった。僕にとってはそれ程強烈な映画だった。

 僕は兄ちゃんと一緒の部屋だった。布団を並べて寝ていたが、その夜は蛇女が思い出され怖くて寝れなかった。僕は兄ちゃんの布団で一緒に寝ていいか聞いた。いつもは一緒に寝るのはダメだと言っていた兄ちゃんだったが、その時はいいよと言ってくれた。たぶん兄ちゃんも怖かったのだ……と思う。その夜、兄ちゃんの布団で寝小便をしてしまった。