昭和の時代と僕+

昭和の時代。僕のまわりで起こった些細な出来事を手当たり次第に綴った。

井戸ポンプと僕

 僕が小さい頃、家には水道が無かった。もちろん周りの家にも水道が無かった。各家ではそれぞれ井戸を掘って手押しポンプで水を汲み上げていた。金気を取るためにポンプの先には布の袋が被せてあったが、手押しポンプで汲み上げた水は冷たく美味しかった。

 僕は学校で水を飲まず我慢して帰って来るとすぐに台所に行った。手押しポンプにはコツがあり何度かフェイントをかけ一気に力を入れて水を汲み上げなければならない。気を抜くと跳ね上がったハンドルが顎に当たり痛い目にあった。花柄のコップで飲む冷たい水は最高だった。

 夏にお客さんが来ると井戸の汲み上げた水でスイカを冷やして出した。お客さんは冷えたスイカを美味しそうに食べていた。
 電動式のポンプで水を汲み上げる家も出てきたが、我が家は井戸水が枯れてしまうこともあったので手押しポンプのままだった。